富山の地物をすべての人に!ドラマ『孤独のグルメ』にも取り上げられた人気居酒屋「居酒屋舞子」

「富山」駅から少し離れた柳町エリアに、朝5時まで営業する居酒屋がある。約半世紀の間、屋号を引き継ぎながら地元客に愛されてきた店「居酒屋舞子」は、美味しい地物が食べられると地元客だけでなく県外からの観光客にも好評だ。お店を始めたきっかけや、仕事への向き合い方を5代目店主の根岸さんへお話を伺った。

「居酒屋舞子」店主 根岸要さん
「居酒屋舞子」店主 根岸要さん

18年の歴史と情熱の詰まった手作り料理

――まずは、お店についてお聞かせください。この地でお店を始められるきっかけはどんなことだったのでしょうか。

根岸さん:お店を始めて18年目になります。前経営者の代からここで働いていて、その方から引き継ぐ形で始めました。

居酒屋という場所が大好きで、いつもお店に入ると「あの鍋の中はなんだろう?」「このメニューはどんな風に出てくるのかな?」と、わくわくするんです。そんな気持ちをお客さまにも感じてほしいと日々励んでいます。

シンプルな白い暖簾や提灯が、昔ながらの居酒屋を彷彿とさせる。
シンプルな白い暖簾や提灯が、昔ながらの居酒屋を彷彿とさせる。

根岸さん:でも、飲食店に勤務する方やタクシーの運転手など、遅くまで人々の娯楽を支えている方々にはなかなかそれができないですよね。家と職場の往復だけで、季節感を感じない生活を送りがちなんです。

「夜中まで働く人たちにも、愛情のこもった手作りご飯を食べる権利がある」という思いをずっと持っていて、自分でお店をやるなら朝まで営業したいと思っていました。

――お店を営業するにあたり、特に心がけていることはございますか。

根岸さん:「面倒くさい」と思うことを手放して、人が嫌がるようなことを、手を抜かずにやるように心がけています。面倒くさいと思うようなことにこそ、宝があると思っています。手間はかかっても既製品は使わず、自分の中の理想に妥協せずに作って、その仕上がりを見て価格を決めています。この店だからできる質・量・価格だと思います。

街中から少し離れたお店にわざわざ足を運んでいただくからには、いろいろなものを食べてほしいですし、食べるときにわぁっという気持ちになって欲しい。そのために漁港へ足しげく通っています。

「どんなものが出てくるだろう?」とわくわくして欲しくて、あえてシンプルなメニュー表記に。
「どんなものが出てくるだろう?」とわくわくして欲しくて、あえてシンプルなメニュー表記に。

――根岸さんが感じられる富山の水産物の良いところは、どのようなところでしょうか。また、特におすすめの地物があれば、教えてください。

根岸さん:山と海が近くて高低差があり、栄養がたくさん詰まっている雪解け水が海に流れ込むのが美味しさのポイントだと思います。また、種類の豊富さも特徴ですね。浅瀬から水深が急に深くなる地形のおかげで富山湾ならではの豊富な魚種が育ちます

おすすめは夏の時期だと岩牡蠣でしょうか。ゴールデンウイークごろからお盆くらいに出回っていて、食べごろは7月から8月前半です。富山の各漁港で取れますが、海の環境によって殻の形状も身の詰まりや味も違ってくるので、それぞれの違いを楽しめます。

鮮度がよく磯の香りがダイレクトに伝わるので、シンプルにレモンだけでも美味い。
鮮度がよく磯の香りがダイレクトに伝わるので、シンプルにレモンだけでも美味い。

お客さまとの絆と、営業に込めた信念

――来店されるお客さまは、地元の方が多いでしょうか。

根岸さん:常連さんをはじめ地元の方もいらっしゃいますが、今は県外の方が多いです。お店に来てくださる方は愛情深い方が多いです。

遅い時間に来店された方にも美味しい料理を提供したくて朝まで営業していますが、遅い時間にいらっしゃるお客さんの「いただきます」「ごちそうさまでした」の一言は、特別に重みを感じることがあります。また、来店されたときは少し固い表情でお疲れのご様子だった方が、一品出していくごとに、柔らかい表情になっていく様子や、帰る時の背筋が少し伸びているような様子を見ると、遅くまでやっていてよかったな、と思います。

店主の根岸さん
店主の根岸さん

――ドラマ『孤独のグルメ』にもお店が出演されていましたが、反響はございましたか。

根岸さん:TVに出たことで、常連さんが喜んでくれたのはやはりうれしかったです。日々迷いもある中で働いてくれているスタッフの誇りになれば、という思いもあり出演しました。

もともと県外の方が来られることが多い店ではありましたが、TV出演の影響で、より多くなりました。また、多くの方にご来店いただく中で、いろいろなご意見もいただくようになりました。その一つ一つに真摯に向き合って、改善を常に心がけています

開店前にお店で待つ方のために、傘や椅子、冷たいお茶まで用意されている。どれも来店した方からの意見を取り入れた。
開店前にお店で待つ方のために、傘や椅子、冷たいお茶まで用意されている。どれも来店した方からの意見を取り入れた。

根岸さん:県外の方が増えた影響で、常連さんの予約が取りにくくなってしまった部分もあります。また皆さんに戻ってきていただけるよう料理やお客さまに真摯に向き合って、従業員にも謙虚な気持ちをもって目配り気配りするよう話しています。

――店舗の営業や生活をされている中で、富山市での暮らしはいかがでしょうか。

根岸さん:便利な町だと思います。まちの中心に人を集めようとする動きがあるので、商業施設が増えてきたり路面電車などの公共交通機関が利用しやすかったりする点が良いですね。

まちなかに住んでいれば、アーケード内で雨に濡れずに買い物や食事もできるので、気軽に外出できます。

富山市民の長年の夢だった、路面電車の南北直通運転。2020(令和2)年3月から開始された。
富山市民の長年の夢だった、路面電車の南北直通運転。2020(令和2)年3月から開始された。

――元々想像されていた富山市に対するイメージと、ギャップはありましたか。

根岸さん:よそ者へのガードが固いイメージがあると、転勤族など外から来た人からは聞きます。でもしばらく住んでみるとだんだんそのイメージも変わってくるみたいで、「離れたくない」「また戻ってきたい」と言われる方は多いですね。

一度懐に入ると裏切らない、一生のお付き合いとなるような関係性が続くところがあると思います。

――富山市内で特に好きなスポットや、おすすめのスポットなどがあれば教えてください。

根岸さん:松川からいたち川にかけての川沿いが、四季を感じられておすすめです。周辺のお店を探したりしながら散歩すると楽しいのではないでしょうか。

松川べりの桜
松川べりの桜

――最後に、これからこのエリアに住まわれる方々に向けて一言お願いいたします。

根岸さん:富山は、胃袋に対してあたたかい町だと思います。食べるものくらいしかないと地元の人は思っている節はあるかもしれませんが、食べるものが豊かだと人は豊かになると思っています。

富山のスーパーは面白いですよ。尾頭付きの朝どれの魚や山積みの蟹など、なかなか他県では見られない光景が見られます。

店主 根岸要さん
店主 根岸要さん

居酒屋舞子

店主 根岸要さん
所在地:富山県富山市柳町2-3-26
電話番号:076-432-4169
URL:https://maiko-t.com/
※この情報は2024(令和6)年9月時点のものです。